インスリン抵抗性と脂肪細胞の機能劣化〜in vivo imaging systemを利用した「肥満余力」可視化の可能性〜

1東京大学大学院医学系研究科クリニカルバイオインフォマティクス研究ユニット、2筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科、3東京大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科、4東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター臨床医工学部門

矢作直也1、武内謙憲2、関谷元博3、位高啓史4、片岡一則4、大須賀淳一3、山崎力1、永井良三1、山田信博2、島野仁2、門脇孝3

我々は、メタボリックシンドロームの病態の根幹をなす、肥満に伴うインスリン抵抗性の本質は、脂肪細胞の肥満に対するネガティブフィードバック機構であるという仮説の下に、「肥満余力」(open-to-fat)という新しい概念を提唱している。脂肪細胞がそのサイズの限界に近づき、肥満余力が減少した状態になると、インスリン抵抗性というブレーキ機構が発動されるという考え方である。今回、肥満余力の減少を遺伝子発現レベルで調べるために、マウス肥満モデルにおける遺伝子発現プロフィールのマイクロアレイ解析を行ったところ、脂肪細胞の機能劣化の所見、すなわち、脂肪酸合成酵素(FAS)に代表されるlipogenic genesの発現低下が示された。さらに、アデノウイルスによるFASプロモータールシフェラーゼレポーター遺伝子の導入とin vivo imaging systemによって、脂肪細胞の機能を可視化することに成功し、肥満ではそれが劣化していることを観察できた。この手法を臨床応用して、肥満余力という概念をヒトにおいて検証し、将来的には臨床診断に役立てて行く可能性についても考察したい。