ホルモン感受性リパーゼ(HSL)遺伝子欠損はob/obマウスの体重増加を抑制する

1東京大学医学部糖尿病代謝内科、2筑波大学臨床医学系内科代謝内分泌、3自治医科大学内分泌代謝学、4東京大学医学部循環器内科

関谷元博1、大須賀淳一1、岡崎啓明1、冨田佐智子1、田村嘉章1、飯塚陽子1、島野仁2、山田信博2、石橋俊3、永井良三4

【目的】HSLはトリグリセリドやコレステロールエステルの水解を行っている酵素である。肥満モデルマウスであるob/obマウスでのHSLの役割について検討した。【方法】ob/obマウスとHSLノックアウトマウスの交配によりレプチン、HSL両欠損マウスを作成、各ジェノタイプ間で比較した。【成績】HSL欠損ob/obマウスはob/obマウス との比較において、体重増加の減少を認め(16週齡で40.4±3.4g vs 54.3±3.8g P<0.01)、組織重量では脂肪組織重量の減少を認めた(16週齡にて傍精巣上体脂肪組織で1.52±0.44g vs 3.59±0.34g P<0.01)が、肝重量などに差は認めなかった。脂肪組織では脂肪細胞の肥大を認めると共に間質において小細胞の著明な集簇を認めた。これらの細胞は免疫染色でS-100は強陽性となり、mRNAレベルでのADRPの発現亢進、FAS、PPARγの発現低下を認め、脂肪前駆細胞が集積していると考えられた。アポトーシスの可能性も検討したが、その寄与は低いものと考えられた。また摂餌量の減少を認めた(14週齡で4.68±0.89g/day vs 5.75±0.52g/day P<0.01)。耐糖能に関しては空腹時の血糖、インスリンには差を認めなかったが、摂食時の血糖高値であり、インスリン値は低値を示し、単離膵島の糖負荷刺激試験においてもインスリン分泌の低下を認めた。酸素消費量に関しては大きな違いを認めなかった。【結論】HSL遺伝子欠損は ob/obマウスの体重を減少させた。原因として脂肪細胞分化障害の可能性、摂餌量の減少、及びインスリン分泌低下の関与が示唆された。