脂肪・肝臓・動脈壁マクロファージにおける新規リパーゼの同定とその生理的機能

1東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科
2筑波大学臨床医学系内科代謝内分泌
3東京大学薬学部衛生化学
4自治医科大学内分泌代謝内科

岡崎啓明1、五十嵐正樹1、西真貴子1、田嶋麻紀子1、関谷元博1、中川嘉2、青木淳賢3、石橋俊4、大須賀淳一1、門脇孝1

【目的】脂肪細胞への中性脂肪(TG)蓄積・肝臓へのTG蓄積・マクロファージ(Mφ)へのコレステロールエステル(CE)蓄積は、肥満・インスリン抵抗性・粥状動脈硬化を引き起こす。これら細胞内TG・CEを水解するTG水解酵素(TGL)・中性CE水解酵素(NCEH)の責任分子は、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)であると従来考えられてきたが、我々はHSL欠損マウスの作成・解析により、脂肪と肝臓にはHSL以外のTGLが、MφにはHSL以外のNCEHが存在し、これらが生理的に重要な役割を果たしていることを示してきた。これら未知のTGL・NCEHをクローニングするため以下の検討を行った。
【方法・結果】遺伝子の公共データベースをリパーゼのコンセンサスモチーフを条件に検索、更にノーザンブロット解析・酵素活性の検討を行い、3個の新規リパーゼを同定。(1)脂肪の新規TGL。遺伝子発現が、空腹時に増加・STZ誘発性糖尿病マウスで増加・ob/obマウスで減少、脂肪分解における役割が示唆。(2)肝臓・小腸の新規TGL。アデノウィルスを用いた肝臓におけるin vivo過剰発現により、肝臓内TG含量が減少・インスリン抵抗性が改善。(3)Mφの新規NCEH。アデノウィルスを用いた泡沫化Mφへの過剰発現により、細胞内CE含量が減少。LPS・TNF-α刺激により、マウス腹腔内Mφにおける遺伝子発現が抑制、動脈硬化など炎症性疾患における役割が示唆。
【結論】3個の新規リパーゼを同定、脂肪細胞の脂肪分解・脂肪肝とインスリン抵抗性・動脈硬化における役割が示唆された。現在ノックアウトマウスなどによる解析を進めている。