マクロファージに発現する新規コレステロールエステラーゼ(macrophage cholesteryl ester hydrolase, MCEH)ノックアウトマウスの解析

1東京大学 医学部附属病院 糖尿病代謝内科
2筑波大学大学院 人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科
3自治医科大学 内分泌代謝科

関谷元博1、大須賀淳一1、五十嵐正樹1、岡崎啓明1、矢作直也1、大橋健1、島野仁2、山田信博2、石橋俊3、門脇孝1

【目的】【方法】マクロファージ(Mφ)の泡沫化現象に対して、蓄積したコレステロールエステル(CE)の分解は防御的に働くと考えられている。従来Mφにおける中性コレステロールエステラーゼ(NCEH)はHormone-sensitive lipase (HSL)である可能性が示唆されてきたが、その遺伝子欠損マウスのMφはNCEH活性が野生型と同等であり、残存する未知の酵素の存在が示唆されていた。我々の研究室ではその候補遺伝子(macrophage cholesterylester hydrolase (MCEH))を同定した。そのin vivo、invitro機能解析のため、発生工学的アプローチを用いて全身でのMCEH遺伝子欠損マウスを作成、表現型解析を行った。
【成績】相同組み換えの起こったES細胞のマウス胚盤胞へのマイクロインジェクションを用いてキメラマウスを作成、その子孫よりヘテロ欠損マウス、そしてその交配によりホモ欠損マウスを得た。HSL欠損マウスのMφではMCEHの発現が亢進しており、HSL欠損マウスでNCEH活性が野生型と同等であることを説明する可能性が示唆された。MCEH欠損マウスはその酵素活性中心が完全に欠失していたが、短縮型のRNAの発現が認められた。MCEH欠損は全身の臓器で認められた。MCEH欠損マウスのマクロファージではHSLの発現が増加していたが、そうした条件でもMφのNCEH活性は約30%減弱していた。
【結論】MCEHはMφのNCEH活性を担う新規コレステロールエステラーゼであり、HSLと協調してマクロファージの泡沫化現象を制御している可能性がある。