多価不飽和脂肪酸(PUFA)によるSREBP-1の抑制

東京大学医学部糖尿病代謝内科

矢作直也、島野仁、飯塚陽子、塩之入太、大橋健、大須賀淳一、原田賢治、後藤田貴也、石橋俊、山田信博

【背景】コレステロールおよび脂肪合成系酵素群の制御を担う転写因子であるSREBP-1は、脂肪酸、トリグリセリド合成に関与する諸酵素の転写を促進することで、脂肪合成を亢進させる。一方、多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、肝臓での脂肪合成を抑制し、高トリグリセリド血症を改善することが知られている。最近、培養細胞系において、PUFAがSREBP-1を抑制することが報告され、PUFAによる肝臓での脂肪合成の抑制の作用機序の一つと予想される。【目的】PUFAが、マウスの肝臓において、SREBP-1および脂肪合成酵素群を抑制するか否かを検討する。【方法】野生型マウス、SREBP-1欠損マウスおよび過剰発現マウスに対し、PUFA(EPA)を経口摂取させた後、肝臓のノーザンブロッティングおよび核蛋白抽出物のウエスタンブロッティングにより、SREBP-1のmRNA量および核内活性型蛋白量を定量した。【結果】PUFA摂取により、野生型マウスの肝臓において、SREBP-1のmRNAおよび核内活性型蛋白量がPUFA非投与群に比べ減少した。SREBP-1欠損マウスと過剰発現マウスに対しては、現在検討中である。【結論】PUFA摂取による肝臓での脂肪合成の抑制に、SREBP-1の抑制を介した経路の存在が示唆された。