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研究室紹介

 



 従来より動脈硬化性疾患のリスクファクターとされる糖尿病、高脂血症、高血圧症などはしばしば合併し、マルチプルリスクファクター症候群などとも言われていました。その実体はインスリン抵抗性症候群や内臓脂肪症候群などとほぼ同一と考えられており、この数年非常に注目されています。これらの肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧症などは生活習慣病とも総称され、geneticな代謝障害を基礎として、環境の変化により病態が悪化/改善するという特徴を有しています。更に、生活習慣病はCardiovascular disease の基礎疾患でもあり、その根本にある代謝障害を解明することは生活習慣病のみならず血管病の治療開発にもつながる可能性を秘めています。我々のグループでは、早くから糖代謝異常と脂質代謝異常とを横断的にリンクしていく発想を中心に据え、血管病も視野に入れながら、インスリン抵抗性症候群の病態解明に取り組んできました。

 研究手法としては、主として発生工学的アプローチ、すなわち種々のノックアウトマウスやトランスジェニックマウスの作成を通じて、生体内でのリポ蛋白動態の解析などをして参りました。特にLDL受容体やapoE、LPLなどによるレムナントリポ蛋白の異化の動態解析や粥状動脈硬化症への影響などを精力的に明らかにしてきました。インスリン抵抗性症候群は単一の原因で生じてくる病態ではなく、複数の遺伝的要因と環境要因が重なった結果として発症していくものと考えられますが、何故にマルチプルリスクファクター症候群として複数の動脈硬化リスクファクターが集積してしまうのか、その本質にせまる研究を展開していくことが我々の長年の夢であり、目標であります。

 またわが国における自然科学研究のあり方という面でも我々には熱い思いがあります。

 この国の将来を考えた場合、世界における日本のプレゼンスをさらに高めていくには最先端の科学技術を発展させていく必要性があるのは明らかですが、その技術開発や人材育成の中心的役割を担うべき大学は、果して十分に機能しているでしょうか?少なくとも医学研究の分野では潜在的な可能性が十分に発揮できているとは言えないのが現状です。たとえば医療全体における大学病院というものの位置付けというテーマに関しても、残念ながらアカデミズムというものの本質が必ずしも正しく理解されておらず、大学の独立行政法人化の流れの中で、収益性、効率性というものばかりが言われています。また日本全体でも、とうに先進国の仲間入りをしていながら、研究開発費は対GDP比で見ても未だにアメリカなどの半分程度という低さです。この現状はまた、大学人自身の意識の問題にも起因しています。特に東大などは各学会において主導的役割を担っていますが、そういう地位や権威を維持すること自体が目的化してしまっているために真の学問が十分に育てないという面もあるように思います。

 こうした現状に風穴を開けていくにはどうしたらよいのでしょうか?我々のスタンスは明快です。学問とは、ソクラテスが見い出したように、対話から始まります。各自が自由な発想で、実績や立場などに関係なく皆が自由闊達に議論しあう雰囲気が何より大事です。大学院生は手を動かしてくれさえすればよい、というような残念な風潮が蔓延しているのが実情ですが、我々のグループは全く違います。大学院生もごく早い段階から各自が自分で選んだテーマを持ち、主体的に研究を進めていくというスタイルをとっています。ひとりひとりが能動的に考え、それがディスカッションを通じてネットワーク化されていく、そういうプロセスが学問の最先端では不可欠と考えます。脳味噌と脳味噌とをぶつけあうくらいの気持ちでこそ本当の鍛錬というものができるわけですし、そういう中から創造性も育っていくのです。

 こうしてわが研究室が梁山泊となり、そこから全国に人材が広がっていく・・・これがずっと以前から我々のグループのリーダーたちが強い信念のもとに実践してきたラボのあり方であり、現に今、少しずつ開花しつつあるところです。

 

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